王立タマサート大学生の就職活動
    大学生の中でもタマサートとチュラロンコーンは特別である。それは求職数に対して求人数が圧倒的に多いからだ。だから、タイの大学生は日本の大学生のような就職活動はしない。学生が職を探す方法は、 1)2月初旬、大学の授業が終わる時期に大学構内で行われる就職フェア。学生を求める企業がブースを出す。2)先輩―後輩関係にもとづく推薦。後輩は先輩に車内の情報を聞き、先輩は後輩を推薦する。3)学生課に届け構内の掲示板に個別に求人情報を出す。また、学部長などの責任者に当該学部の成績優秀者リストをもらい、個別にアプローチする。工学部など科学技術系学部でも教授が就職先を紹介するということはあまりなく、先輩―後輩関係で学生は就職情報を得ようとする。それ以外の方法としては、新聞広告の利用がある。しかし、バンコクポストなどの英字紙では1週間掲載すると2〜3万バーツと少しコストがかかる。個人的な知り合いにどのように職を探したのか聞いてみるとインターネット("Job Top Gun"等)を利用したと答えた。

会計商学部の学生で最も優秀なのは会計学科である。会計商学部は1学年約400人在籍しているが、会計学科、ファイナンス学科、マーケティング学科が主要学科で、これらの学科には100人前後の学生が在籍している。なかでも最も優秀なのは会計学科である。会計商学部全体を通して女子学生の比率が高いが、会計学科は特に高い。会計学科は優秀な女子学生が進学するコースというイメージが強い。卒業後も国際的に有名な会計監査会社に就職する。経済学部や政治学科が政府関係機関に就職する率が高いが、彼らの多くは民間企業に就職する。タマサート大学では全般的に学生は相当勉強することを求められる。そのなかでGPAが3.0以上ある女子学生は特に優秀である。男子学生は数が少ない分2.5以上で優秀だと評価される。平均的に女子学生のほうが成績が優秀だが、2.5でもタマサート大学の成績評価の厳しさを考えると十分評価できる。

卒業後の不満で最も多いのは仕事に対するものである。特に、仕事が自分のキャリア形成に役立たないと感じるときである。ルーティンワークの連続で目新しいことがない状態は不満を引き起こす。彼らはキャリアアップをしたいと考えている。それによって給与が上がるからである。進学(MBA)もキャリアアップの1つの方法である。ファイナンス学科やマーケティング学科の学生は就職後しばらく働いて学費と経験を蓄え、留学あるいは国内のMBAに入学したいと考えている。また、エンジニアにもMBAを取得したいという希望は強い。国内MBAは夜間行われるため、仕事を続けながら勉強できる。サイアム・セメントや欧米企業はMBAなど社員個々が勉強することを推奨しているので、社員がMBAに通うことに理解があるし、奨学金も出している。サイアム・セメント・グループ企業5社の従業員約540名に対して行ったあるアンケート調査では、仕事に対する満足度が組織へのコミットメントに最も強く影響しているという結果が出ている。

 その他、タマサート大学が毎年行っている卒業生の卒業後進路調査レポートのコピーを入手したので今後そのデータを整理紹介していく。

文責:日高謙一

   at 2005-04-01